あなたは今、こんな状態になっていませんか?
- 毎週のように残業でしのいでいるが、来週も同じ量の仕事が入ってくる
- 自分かベテランが休むと、その日の業務が止まる
- 新しいことに手を付けたいのに目の前の対応だけで1日が終わる
仕事が回らない日が続くと、原因を自分の段取りに求めてしまいがちです。 優先順位の付け方が悪いのかもしれない。 頼まれごとを断れない自分がいけないのかもしれない。
実は、会社全体の仕事が回らなくなっているとき、原因が個人の処理能力にあることはほとんどありません。 結論を言うと、回らない原因は仕事が特定の人に集まる状態を放置していることにあります。
なぜなら個人の工夫で処理できる量を増やしても、集まってくる量そのものは変わらないからです。 早く終わらせても、空いた分にまた別の仕事が入るだけ。 そして現場からは人が足りないという声が上がる一方で、経営側は本当に足りないのかを判断できないまま、同じ状態が何年も続いていきます。
この記事では、次の内容を解説していきます。
- 自分の会社がどこで詰まっているのかの見分け方
- 今の人数のまま仕事が回る状態に戻す進め方
- 人を増やすかどうかを判断する材料
専任の担当者がいない会社でも、読み終える頃には今日のうちに着手できる最初の一手が決まっている状態になります。
仕事が回らないのは個人の能力ではなく業務の集まり方の問題
はじめにお伝えしておくと、仕事が回らない状態はそこで働いている人の能力とほとんど関係がありません。 同じ人が同じやり方で去年までは回せていた、という会社をよく見かけます。 変わったのは人ではなく仕事の集まり方のほうです。
終わらないと回らないは別の問題
まず、似ているようで違う2つの状態を分けておきます。
- 終わらない:作業の量が多く、その日のうちに片付かない状態
- 回らない:誰かの手が空くまで、他の仕事が先に進まない状態
終わらないだけなら残業や休日出勤で吸収できてしまいます。 つらいですが量の問題なので、忙しい時期を越えれば元に戻ります。
一方、回らない状態で生まれるのは待ち時間です。 見積を出せるのが社長だけなら、社長が現場に出ている間その案件は止まったまま。 請求書の内容を確認できるのが経理のベテランだけなら、その人が休んだ日は請求が動きません。 つまり全員が忙しく働いているのに、会社全体の仕事は進んでいないという状態が起きます。
あなたが感じているのが後者なら、作業を速くしても解決しません。 止まっているのは作業そのものではなく、その仕事を渡せる相手がいないところだからです。
個人の工夫で処理量を上げても状態は戻らない
仕事が回らないときの対処法として、優先順位を付ける・頼まれごとを断る・周りに頼る、といった方法がよく紹介されます。 どれも間違いではありません。 実際に目の前の1週間をしのぐ効果はあります。
ただ、これらはすべて一人が処理できる量を増やす方法です。 処理量を増やしてもその人に仕事が集まる状態が変わらなければ、空いた分にはまた別の仕事が入ります。 やめる人が出るたびにその業務が同じ人へ回ってくるのも、他に渡せる相手がいないから。
だからこそ変えるのは頑張り方ではなく、仕事の集まり方のほうになります。
誰かが休んでも業務が止まらない会社になる
仕事の集まり方を整理できると、会社の状態は次のように変わります。
- 特定の人が休んでも、その日の業務が止まらない
- 経営者が現場を離れて考える時間を作れる
- 新しく入った人が、同じ手順で同じ仕事を進められる
- 人を増やすべきかどうかを、感覚ではなく記録をもとに判断できる
大がかりなシステムを入れる話ではありません。 ここから解説する内容は、業務を実際にやっている担当者と経営者の2人がいれば進められます。 そのくらいの規模だからこそ、忙しい時期でも止まらずに続けられます。
自分の会社がどこで詰まっているのかを見分ける
仕事が回らないとき、詰まっている場所はだいたい次の4か所のどれかです。 日々の中で気づくサインから、どこが詰まっているのかをたどってみてください。
| 思い当たるサイン | 詰まっている場所 |
|---|---|
| その人が休むと業務が止まる | 一人しか手順を知らない仕事 |
| なぜやっているかを誰も説明できない | 惰性で残っている仕事 |
| 細かいことまで確認の連絡が来る | 特定の人に集まりすぎた判断 |
| 誰がどれだけ抱えているか説明できない | 把握されていない仕事量 |
複数当てはまる会社がほとんどです。 その場合は、後ほど紹介する進め方の順番どおりに手を付ければ問題ありません。
一人しか手順を知らない仕事が増えている
最も多いのがこの詰まり方です。 次のようなことが起きていたら当てはまります。
- その人が休むと、関係する業務がその日は進まない
- 進め方を知りたい人からの質問が、いつも同じ人に集まる
- 引き継ぎの資料がなく、頭の中と個人のパソコンの中にしか手順がない
こうなるのは誰かが情報を抱え込んだからではありません。 忙しいときはできる人に任せるのが一番速いからです。 その判断を何年も積み重ねた結果として、渡せない仕事ができあがります。
なお、この状態を「自分がいないと回らない」と表現する人がいますが実態は逆です。 本人の代わりがいないのではなく、代わりを用意する時間を作れていないだけ。 経営者自身がこうなっている場合は、休めない・辞められない・新しいことを始められない、という形で影響が出ます。
やめてよい仕事が惰性で残っている
次に多いのが、必要性がなくなったのに続いている仕事です。
- 誰も読んでいない日報や報告書
- 同じ内容を紙とシステムの両方に入力している作業
- 使わなくなった台帳の更新
- 参加者の半分が発言しない定例会議
見分け方は簡単です。 「これは何のためにやっていますか」と聞いて答えられる人がいなければ、その仕事は惰性で残っています。 始めた当時は理由があったのに、その理由のほうが先になくなってしまった状態です。
小さな判断まで社長や特定の人に集まっている
作業は渡したのに、なぜか忙しさが変わらない。 その場合は判断が自分に残っています。
- 値引きの可否を毎回確認される
- 見積の最終確認が必ず自分を通る
- 問い合わせやクレームの一次対応を判断できるのが自分だけ
- 数千円の備品購入にも確認の連絡が来る
判断を待っている間、担当者の手は止まったままです。 確認する側は聞いてくれたほうが安心だと思っていますが、その安心と引き換えに会社全体では待ち時間が積み上がっていきます。 作業を渡すことと判断を渡すことは別だと考えてみてください。
会社全体の仕事量を誰も把握していない
最後の詰まりは量が見えていないことです。
- 誰が何をどれだけ抱えているかを説明できる人がいない
- 受注を調整したり納期を延ばしたりする基準がない
- 現場は足りないと言い、経営側は本当に足りないのか判断できない
この状態が厄介なのは、話し合いが精神論になってしまうところです。 現場が忙しさを訴えても、数字がなければ経営側には判断できません。 逆に記録さえあれば「この人に週の半分が集中している」という事実をもとに話せます。 後ほど紹介する進め方を記録から始めるのは、そのためです。
仕事が回る状態に戻すための進め方
ここからは実際に手を動かす部分です。 順番に意味があるので、上から進めてみてください。 特に手順を書き出す作業より先に、やめる仕事を決めることが、途中で力尽きないための分かれ目になります。
整理したあとにデジタル化まで進めたい場合は、業務効率化とDXの違いと4ステップの解説記事で次の段階を紹介しています。
ステップ1:1週間分の仕事を書き出して全体量を見えるようにする
最初にやるのは記録を取ることです。 自分と、仕事が集中しているメンバーに、1週間だけ次のことをメモしてもらいます。
- やった仕事の名前
- かかったおおよその時間
- 誰かの確認や返事を待った時間
30分単位のざっくりした記録で十分です。 紙でもスプレッドシートでも構いませんし、新しいツールを入れる必要もありません。
大事なのは、予定ではなく実際にやったことを書く点です。 予定表には割り込みの電話も探しものの時間も確認待ちも載っていませんが、回らない原因はたいていそこにあります。 1週間分が集まると、誰にどんな仕事が集まっているのかが数字として見えてきます。 この記録がこのあとのすべての判断のもとになります。
ステップ2:やめる仕事と減らす仕事を先に決める
記録が集まったら、手順を書き出したり人に渡したりする前にまず量を減らします。 なくす予定の仕事を手順にまとめても意味がないので、順番はここが先です。
判断は次の順で考えてみてください。
- やめられないか
- 減らせないか
- 渡せないか
- 自動化できないか
やめる例としては、読まれていない報告書の作成や使っていない台帳の更新などがあります。 減らす例なら、週1回の報告を月1回にする、参加者を絞る、記入項目を半分にする、といったものです。
やめる判断が怖いときは期限を決めてみてください。 「1か月やめてみて、困ったら戻す」と決めておけば決断の重さがぐっと下がります。 実際に戻す必要が出てくる仕事は、それほど多くありません。
判断の最後に出てくる自動化は、費用をかけずに試すこともできます。 無料のAIを使った業務効率化の方法の解説記事で、実際の手順を紹介しています。
ステップ3:一人しかできない仕事の手順を書き出す
減らしたあとに残った仕事のうち、その人しかできないものを手順にしていきます。 すべてを一度に書き出す必要はありません。 頻度が高く、止まると困る仕事から順に進めましょう。
書くのは実際にその仕事をやっている担当者本人です。 経営者が想像で書くと実際の手順とずれます。 書式は次の3つが入っていれば十分です。
- 手順の流れ
- 迷いやすい場所とその判断のしかた
- 関係する取引先や社内の連絡先
きれいなマニュアルにしなくて構いません。 次に別の人がやるときに、迷って手が止まる場所さえ書いてあれば役に立ちます。
ステップ4:判断のルールを決めて任せる範囲を広げる
手順を渡しても、判断が自分に残っていると業務は止まったままです。 そこで確認しなくてよい範囲を決めます。
- 金額:いくらまでは担当者が決めてよいか
- 条件:どんな内容なら確認せずに進めてよいか
- 例外:どうなったら必ず相談してほしいか
決めるときは、失敗しても取り返せる範囲から始めるのが安全です。 最初から大きな判断を渡す必要はありません。 小さな範囲でも、確認の往復が消えるだけで待ち時間は目に見えて減ります。
任せた直後は、いつもと違う判断が出てくることもあります。 そこで取り上げてしまうと元に戻ってしまうので、結果ではなく判断の理由を聞いて、必要ならルールのほうを直しましょう。
ステップ5:週に一度の見直しで元に戻らないようにする
最後に、戻さないための仕組みを作ります。 週に一度15分だけ時間を取り、次の3点を確認します。
- 今週新しく増えた仕事はあるか
- 止まった場所はどこか
- やめたはずなのに復活している仕事はないか
参加するのは、業務をやっている担当者と経営者の2人で十分です。 会議体を作る必要も資料を用意する必要もありません。 この15分があるかどうかで、数か月後に元の状態へ戻るかどうかが決まります。
業務の整理が途中で止まってしまう理由
ここまでの進め方は特別なものではありません。 それでも途中で止まる会社が多いのには、決まった理由があります。 先に知っておくと避けられるので、3つだけ紹介します。
忙しさが落ち着いてから始めようとする
最もよくある止まり方です。 ただ、仕事が回らない状態が続いている会社に落ち着く時期は来ません。 落ち着かないから回らないのであって、順番が逆になっています。
始めるのに必要なのは、まとまった時間ではなく1週間の記録だけです。 記録は業務のついでに取れます。 整理のための時間を確保してから始めようとすると、いつまでも始まりません。
完璧なマニュアルを作ろうとする
手順を書き出す段階で止まるパターンです。 誰が読んでも間違えない資料を作ろうとすると、写真や画面の図まで必要になっていつまでも終わりません。
必要なのは、次にやる人が迷う場所が書いてあることだけ。 半分の完成度でも渡してしまえば、足りない部分は質問として返ってきます。 その質問への回答を書き足していくほうが、机の上で作り込むより速く仕上がります。
社長が一人で整理を進めてしまう
責任感の強い経営者ほど自分でやろうとします。 ただ、手順を最も正確に知っているのは実際にその仕事をやっている担当者です。 経営者が一人で書いた手順は、現場の実態とずれたまま定着しません。
進めるときは担当者と経営者の2人一組が基本になります。 担当者が手順を書き、経営者がやめる判断と任せる範囲を決める、という分担です。 新しく人を雇う必要も、専任のチームを作る必要もありません。
とはいえ、その2人が現場を回している当事者だと、記録を取る段階で手が止まることもあります。 社内だけで進みそうにないときは、業務整理室のような外部の力を使う方法もあります。 現場の担当者の方と一緒に業務を整理し、決めた改善策を実行して定着するところまで見るのが私たちの仕事です。
人を増やす前に確かめておきたいこと
ここまで読んで、それでも足りないと感じた方もいると思います。 人を増やす判断が間違っているわけではありません。 ただ、整理をしないまま増やすと、渡せない仕事が増えるだけで状況が変わらないことがあります。
次の2つに当てはまるなら、増員や外部への委託を具体的に検討する段階です。
やめる仕事を決めても業務時間が減らない
やめる仕事と減らす仕事を決めたあとで、もう一度1週間の記録を取ってみてください。 それでも時間が減っていないなら、今の人数では受けきれない量だということになります。 記録という根拠があれば、増員の判断も取引先との納期の相談もしやすくなります。
手順を渡せる相手が社内にいない
手順を書き出したのに渡す相手がいない、という場合もあります。 このときは全員が手一杯なのか、その仕事に必要な知識を持つ人がいないのかで対応が変わります。
- 全員が手一杯:人を増やす、または業務の一部を外に出す
- 知識を持つ人がいない:育てる時間を先に確保する
どちらにしても、手順が書けていること自体が前進です。 手順があれば、新しく入った人にも外部に依頼するときにも同じものを渡せます。 逆に手順のないまま人を増やすと、教える時間が既存メンバーの負担として乗ってくるので、しばらくは回らない状態が続きます。
事務から手を付けて残業を減らした実例は建設業4社のDX事例の解説記事で紹介しています。
まとめ
仕事が回らないのは、そこにいる人の能力の問題ではありません。 仕事が特定の人に集まる状態が続いていることが原因です。 だからこそ変えるのは頑張り方ではなく、集まり方のほう。
要点は次のとおりです。
- 回らないと終わらないは別の問題
- 詰まりは記録を取れば見える
- 減らすのが手順化より先
- 判断を渡さないと止まったまま
- 週15分の見直しで戻らなくなる
まず今週、自分と忙しいメンバーの仕事を書き出すところから始めてみてください。 1週間分の記録があれば、やめる仕事も渡す仕事も、人を増やすかどうかも、事実をもとに決められるようになります。



